Lesson94

認知障害を高める副流煙



受動喫煙は認知機能障害のリスクを高める
50歳以上の非喫煙者を対象にした英国での研究結果

喫煙認知機能障害認知症の危険因子と考えられている。では、受動喫煙も、認知機能に影響を与えるのだろうか。

英国Cambridge大学のDavid J Llewellyn氏らは、50歳以上の非喫煙者を対象に、唾液コチニン濃度を指標とする受動喫煙レベルと認知機能障害の関係を調べる住民ベースの研究を行った。この結果、コチニン値が高いグループでは、認知機能障害の有意なリスク上昇が見られることが明らかになった。詳細は、BMJ誌電子版に2009年2月12日に報告された。

分析対象は、1998年、1999年、2001年にHealth Survey for England(イングランド住民を代表する人々を無作為に選んで毎年行われている)に参加し、さらに2002年のEngland Longitudinal Study of Ageingにも参加した人々。

このうち、以下の条件を満たした4809人(平均年齢65.1歳、女性が53%。98%が白人)を選出した:2002年の時点で50歳以上、両調査の時点で非喫煙者、Health Survey for Englandにおいて唾液コチニン濃度が測定されている、喫煙歴に関する詳細な情報がある、England Longitudinal Study of Ageingにおいて精神心理学検査を用いた認知機能評価を受けている。

ニコチンパッチなどの禁煙補助製品を使用中、または唾液コチニン濃度が14.1ng/mL以上の人(実際には喫煙者であると考えられるため)は除外した。

主要アウトカム評価指標は、認知機能障害に設定。認知機能を調べる個々の検査の成績を複合したスコアを計算して、下位10%を認知機能障害と判定した。

対象者を唾液コチニン濃度に基づいて同じ人数からなる4群に分け、コチニン濃度最低群(0.0〜0.1ng/mL)と比較した認知機能障害のオッズ比を、認知機能障害の危険因子(年齢、性別、人種、調査を受けた年、学歴、職業、純粋資産、喫煙歴、肥満、飲酒、身体活動、鬱症状)で調整して求めた。

調整オッズ比は、0.2〜0.3ng/mL群が1.08(95%信頼区間0.78-1.48)、0.4〜0.7ng/mL群は1.13(0.81-1.56)、0.8〜13.5ng/mL群は1.44(1.07-1.94)で、コチニン濃度が高まるほど認知機能障害のリスクは高まっていた(傾向性のp=0.02)。

糖尿病、心血管疾患、高血圧などを調整に加えても、結果はほぼ変化しなかった。

これまでに喫煙歴が全くない者に限って比較すると、コチニン濃度が最も高いグループの調整オッズ比は1.70(1.03-2.80)になった。

一方、喫煙歴があり、現在は禁煙している者の中で比較した場合には、コチニン濃度最高群の調整オッズ比は1.32(0.92-1.91)で、差は有意でなかった。

著者らは、受動喫煙が認知機能障害リスクを高める可能性を、国民を代表する集団を対象に前向きに評価する研究が必要だと述べている。

原題は「Exposure to secondhand smoke and cognitive impairment in non-smokers: national cross sectional study with cotinine measurement」、全文は、こちらで閲覧できる。
【大西 淳子=医学ジャーナリスト】


(2009年3月2日 記事提供 日経メディカルオンライン)