Lesson68

女性の敵




喫煙は女性の生殖に関わるホルモンに悪影響を及ぼす、米国の研究
内分泌系が乱れ、不妊や早期閉経にも関与

喫煙は、女性の生殖機能に関わるホルモンの活性に影響を及ぼす可能性がある。尿中の女性ホルモン代謝産物と卵胞刺激ホルモン(FSH)の、月経周期に合わせた変動パターンと喫煙との関係を調べた研究で、1日に10本以上喫煙する女性では、黄体期から卵胞期に移行する時期のFSH値が30〜35%上昇していることが明らかになった。米カリフォルニア州保健局のGayle C. Windham氏らが、Environmental Health Perspectives誌2005年10月号に報告したもの。

喫煙女性の月経周期の乱れは、喫煙によるホルモン機能の異常が一因になっていると考えられる。が、エストロゲンとその代謝産物を測定した研究では、一貫した結果は得られていない。また、喫煙者ではFSHレベルが上昇しているという報告もあったが、月経周期全体についてFSHレベルを測定した研究はなかった。そこで著者たちは、生殖年齢の女性の月経周期における、エストロゲンとプロゲステロンの代謝産物とFSHのレベル変動に、喫煙がどのような影響を与えるかを調べた。

会員制の健康維持団体HMOの1つを選び、18〜39歳(平均年齢31歳)の女性403人を選出した。被験者たちには平均3.6回の月経周期の間、毎朝尿を採取して凍結してもらった。喫煙量は、毎日の喫煙本数の申告を受け、さらにコチニン濃度を検査して申告の正しさを確認した上で、非喫煙者(0本)、軽度喫煙者(1日に1〜9本)、中等度喫煙者(1日10〜19本)、高度喫煙者(1日20本以上)に分類した。尿中のエストロゲンとプロゲステロンの代謝産物は毎日測定した。

 その結果、中等度喫煙者では、ベースラインのエストロゲン代謝産物が有意に減少(22%)していた。以下は、統計学的有意性は示せなかったが、非喫煙者と比較して、中等度以上の喫煙者は、卵胞期のエストロゲンおよびプロゲステロン代謝産物が25〜35%多く、高度喫煙者だと、黄体期のプロゲステロン代謝産物が25%減少している傾向が見られた。

FSHについては、喫煙状態に基づいて選んだサブセット(約300回の月経周期)について測定した。その値は、中等度以上の喫煙者で、多変量(年齢、人種、妊娠歴、BMI、アルコール、カフェイン摂取量)調整後も、黄体期から卵胞期に相当する出血5日前から出血初日の間、有意に上昇(30〜35%)していた。

今回の分析の対象となった喫煙者の月経周期は、非喫煙者に比べ短かった。その原因は、プロゲステロンの低下に基づくFSHの上昇に誘導される卵胞期短縮にある可能性が今回示された。卵胞期が短いと、生殖能力が低下することが示唆されている。

得られた結果は、タバコの煙に含まれる化合物が、おそらくは卵巣レベルで、内分泌機能に影響を与えることを示した。卵巣に対する影響は下垂体ホルモンの分泌にも影響する。したがって、こうした内分泌系の混乱が、喫煙女性の生殖機能の異常(月経不全や不妊、早期閉経など)に関係すると考えられる。

本論文の原題は「Cigarette Smoking and Effects on Hormone Function in Premenopausal Women」。全文がEnvironmental Health Perspectives誌Webサイトの[こちらhttp://ehp.niehs.nih.gov/members/2005/7899/7899.html]で閲覧できる。
(大西淳子、医学ジャーナリスト)

(2008年5月26日 記事提供 日経メディカルオンライン)