Lesson61

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ティーンエージャーの喫煙防止に有効な方法は?
訓練を受けた生徒が教室外で喫煙防止を働き掛ける方法は有効
大西 淳子=医学ジャーナリスト

ティーンエージャー喫煙防止を目的として、訓練を受けた生徒が、教室外で同級生に喫煙防止を働き掛ける方法の効果を2年間にわたって調べた結果、喫煙者の増加を有意に抑制できることが示された。英国Bristol大学のRona Campbell氏らは、詳細は、Lancet誌2008年5月10日号に報告された。

世界のティーンエージャーの喫煙状況を調べた「Global Youth Tobacco Survey」の結果、13〜15歳で「喫煙したことがある」生徒は17.3%存在し、8.9%が既に喫煙者であることが明らかになっている。喫煙率は米国(17.5%)と欧州(17.9%)で高かった。

学校での取り組みの一つに、同年代または少し年長の生徒が、喫煙の害などについて教える「ピアプログラム」がある。著者らは、中学校の教室で行われる喫煙防止教育に加えて、教室外でピアサポーターが同級生に喫煙しないよう働き掛けるプログラムの効果を調べる層別無作為化試験を行った。

 イングランドとウェールズの中学校に参加を呼び掛け、協力を申し出た学校のうち59校を選んだ。対象は、12〜13歳の生徒1万730人。無作為に通常の喫煙防止教育と喫煙規制対策の実施を継続(対照群、29校、5372人)と、それらに加えてピアプログラムASSIST(A Stop Smoking In Schools Trial)を実施(介入群、30校、5358人)に割り付けた。

 ASSISTは、その学年で影響力の大きな生徒を選んで、外部の専門家がピアサポーター養成のための訓練を行い、教室外での活動を依頼するもの。具体的には、まず生徒全員に、同学年で尊敬する生徒や、スポーツやその他の活動でリーダーシップを取れる生徒は誰かを尋ねた。その学年の生徒の15%がピアサポーターになるよう人数を調整し、名前が挙がった生徒を集めて説明会を開催。ピアサポーターの役割を説明して、協力の意思を確認した。

 専門家が学校で行った2日間の訓練で、ピアサポーターの候補となった生徒たちは、「ピアサポーターの任務は、健康と環境に対する喫煙の影響と非喫煙の利益を同級生に伝えることだ」と認識し、そのために必要な話す技術、聞く技術、言葉を使わないコミュニケーションの技術などをロールプレイその他の方法を通じて学んだ。訓練を完了、ピアサポーターとしての活動に同意したのは835人(全体の16%)だった。

 介入は10週間実施した。ピアサポーターは、登下校時、休憩時間、放課後などの同級生との会話の中で、喫煙防止を働き掛けた。

追跡は、介入直後、1年後、2年後に行った。主要アウトカムは、調査前1週間の喫煙。学年全体とは別に、喫煙リスクが高いグループ(ベースラインで、習慣性ではないが時々喫煙する、喫煙の経験がある、または過去に喫煙者だった生徒)に対する効果も分析した。先に行われた研究で、介入の効果はハイリスク群においてより大きいことが示唆されていたためだ。

 分析はintention-to-treatで行った。全体では、調査前1週間に喫煙していた生徒の割合は、ベースラインが5.7%、1年後は13.8%、2年後は20.3%と増加していた。喫煙のリスクは、介入直後(9349人)は対照群に比べ介入群で低い傾向が見られた(オッズ比0.75、95%信頼区間0.55-1.01)。1年後(9147人)は0.77(0.59-0.99)で有意差があったが、2年後には0.85(0.72-1.01)と非有意になった。これは、介入の効果が時間経過と共に低下することを示唆する。

 喫煙リスクが高い群では、介入直後(3561人)が0.79(0.55-1.13)、1年後(3483人)が0.75(0.56-0.99)、2年後(3294人)は0.85(0.70-1.02)だった。

 3回の評価データを利用して3層モデルを構築、喫煙のリスクを対照群と比べたところ、介入群のオッズ比は0.78(0.64-0.96)で差は有意だった。これは、英国全土で12〜13歳時にASSIST介入を行うと、14〜15歳の喫煙者が約4万3000人減ることを意味する。
 
  介入に要した費用は、生徒1人当たり27ポンド(95%信頼区間19-48)だった。訓練のための専門家の旅費を除くと、1人当たりのコストは23ポンドになった。

 これらの結果は、ASSIST介入はティーンエージャーの喫煙率を減らせる可能性を示している。

 原題は「An informal school-based peer-led intervention for smoking prevention in adolescence (ASSIST): a cluster randomised trial」、

(2008年5月26日 記事提供 日経メディカルオンライン)