Lesson57

エビデンスで説明
 肺年齢で禁煙のやる気をアップ




自分と同じくらいの肺機能を持った標準的健常者の年齢を教えると、喫煙者は煙草をやめる気になる。これは一般開業医が使える禁煙対策になりそうである。
Laurie Barclay

患者に肺年齢、つまり患者と同じくらいの肺機能を持った標準的健常者の年齢を教えることは喫煙者に煙草をやめさせる動機付けになり、この方法は一般開業医が禁煙対策として使えそうである、とのStep2quitランダム化対照試験の結果が3月7日『BMJ』オンライン版第1号に報告された。

「慢性閉塞性肺疾患[COPD]を早期診断するとともに肺に障害があると伝えることによって、患者は禁煙プログラムに集中するようになり、肺障害を受けやすい人の禁煙達成率が向上する」とThe Limes Surgery(英
国ハートフォードシャー州ホジソン)の開業医、Gary Parkes, MDらは書く。「肺年齢のコンセプト(FEV1[1秒量]が患者と大体同じくらいの人は普通何歳か)は、スパイロメトリーデータを分かりやすくする方法、また明らかに肺の老化が進んでいることを喫煙者に心理的に理解させる手段として1985年に考案された。我々は、喫煙者に肺年齢を伝えることによって、特に肺障害が進んでいる人の禁煙が成功するという仮説を立て、検証してみた」。

英国ハートフォードシャー州にある5つの開業病院で35歳以上の喫煙者561名に対してスパイロメーター検査を呼び掛け、肺機能を評価した。介入群の参加者には、肺年齢すなわちスパイロメーターの成績が同じくらいの標準的健常者の年齢で検査結果を知らせた。対照群の参加者にはFEV1の数字をそのまま知らせた。両群で喫煙カウンセリングを行い、地域の国民健康保険禁煙指導サービスを紹介した。

主要エンドポイントは12カ月後の唾液コチニン検査による禁煙の成功、副次エンドポイントは報告された1日喫煙本数の変化と慢性閉塞性肺疾患の新規診断であった。追跡率は89%であった。

12カ月後、介入群の禁煙達成率は13.6%であったのに対し、対照群は6.4%であった(その差7.2%; P = 0.005; 95%信頼区間2.2% - 12.1%; 治療必要例数14)。スパイロ
メーターの肺年齢が高かった人は、介入群でも対照群でも、標準的肺年齢の人ほど禁煙しようとしなかった。

1人が禁煙を達成するのにかかるコストは280ポンド(366ユーロ、556米ドル)と推計された。参加者の計16%(89/561)は閉塞性肺疾患と新たに診断された(介入群17%、対照群14%)。

「喫煙者に肺年齢を教えることによって禁煙成功率が改善するが、この方法が禁煙効果をもたらすメカニズムは分からない」と著者らは書く。「分かりづらい検査結果を患者に渡すより、その情報がいい知らせなのか悪い知らせなのか、分かりやすく目に見えるかたちで提供した方が禁煙成功率が上がる。健康と経済に喫煙が与える負担を考えれば、この新しくて簡単な介入法の経済効果を正式に評価する研究を優先的に進めるべきである」。

The Health Foundationが研究費を提供した。著者らは開示情報で金銭的利害関係のないことを明らかにしている。

付随する論説記事で、ローザンヌ大学(スイス)のRaphael Bize, MDとJacques Cornuz, MD, MPHは、すべての参加者にスパイロメトリー検査を行わなかったことから、COPDのスクリーニング効果を検討していないと指摘した。その他の限界として、対象患者集団と募集した全患者集団の比較可能性に関するデータがないこと、介入群の参加者と治療関係者の接触時間が対照群より長いこと、治療結果のデータが一時点の禁煙率に限られていること、などが挙げられた。

「これまでのエビデンスに基づくと、スパイロメトリー検査で肺年齢を教える方法とスパイロメトリーを使わない方法の効果を比較した試験の結果を待つか、Parkes博士らが提案した禁煙対策を採用するか、開業医はどちらかを選ばなくてはならない」とBize博士、Comuz博士は書く。「このような限界はあるにせよ、肺年齢を一目で分かるようにすることは、スパイロメトリーの結果を知らせる手立てとして最適なやり方と思う。また、National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)の最新の禁
煙治療指針にあるように開業医が個々の患者に合わせて禁煙指導の方法を変えるきっかけになるのではないだろうか」。

Bize博士とComuz博士は開示情報で金銭的利害関係はないと公表している。

(2008年3月12日 記事提供 Medscape)