Lesson49

禁煙なんて簡単さ
医師おもしろ体験談



禁煙なんて簡単なものさ、私なんかもう百回以上やったよ」というマーク・トウェインの名言を引用し、自らの禁煙体験を語ってくれた53歳の内科医の先生。「やはり気合だと思います」と言い切る36歳の循環器科の先生。本サイト「日経メディカル オンライン」では1653人の会員医師から回答を得た アンケートの結果 をもとに、「今年こそ!禁煙治療」と題した連載をお届けしてきた。今回は、番外編として、医師自身の禁煙体験談、禁煙にまつわるエピソードを紹介する。

アンケートで自らの禁煙体験について自由意見を求めたところ、実にたくさんのコメントが寄せられた。喫煙の害をよく理解している医師といえども、禁煙が難しいことが分かる。

禁煙のきっかけとして挙げた医師が多かったのが「人生の節目」。年齢などの節目とともに、大学卒業、呼吸器科への勤務がきっかけになることが多いようだ。

◆ストレスがたまって喫煙を始めたのですが、本格的に呼吸器内科を始めるときにやめました。それまでは循環器内科で1年間働いており、引っ越しもありました。環境が変わり、意識が変わり、行動が変われば、禁煙もできるのではないかと思っています。
(31歳 勤務医 呼吸器科)

◆医学部学生の時に一度禁煙したが、卒後研修医の時に再開した。その後、循環器科に所属する前に短期間、呼吸器専門病院に勤務した際に再度禁煙した。以後、20年以上、禁煙を継続している。タバコの煙は大嫌いです。しかし、今でも、バーで遠くの席に座っている人がタバコを吸っていると、あの人はおいしいと感じているだろうなと思うことがあります。また、喫煙を再開した夢を見ることもあります。(50歳 開業医 循環器科)

◆大学卒業を記念して禁煙した。(51歳 勤務医 内科)

◆大学時に「医師は禁煙すべき」と思い禁煙。(44歳 勤務医 呼吸器科)

◆40歳で禁煙。それまでは1日50〜100本喫煙していた。(67歳 産業医)

◆50歳の誕生日にやめた。(53歳 病院 内科)

21世紀になって、20世紀の遺物と考え、やめた。(45歳 病院 神経科)

医師ならではの禁煙の動機として、解剖などで「喫煙者の肺を実際に見ること」がある。だが、さらに多かったのが「自分自身が病気になったこと」。医師とはいえ自分の身に災難が降りかからないと、なかなか変われないのかもしれない。

◆大学生時代に解剖実習で肺癌の方の肺を見て、タールが染み出てきたのを目の当たりにし、禁煙することにした。(51歳 勤務医 内科)

◆解剖をしていて喫煙者の肺を見たとき、「明日はわが身」と思い禁煙をしようと決心した。やはり、患者様も強いインパクトがあれば中止できると思う。(50歳 勤務医 内科)

◆10年喫煙していたが、ひどい扁桃腺炎にかかり、それをきっかけに禁煙できた。別にニコチンパッチなどは必要としなかった。禁煙中は何度か吸いたいと思うが、その時その時に別のことを考えたり、氷、水、ガムなどで気を紛らわせるのがいいと思った。また、飲み会はできるだけ避けるべき。飲み会をきっかけにまた吸ってしまうということはそれまで結構ありました。(30歳 勤務医 整形外科)

◆1日40本のヘビースモーカーであった40代の大学医局勤務時代、禁煙トライに何度も挑戦するもことごとく失敗していたある日、突然喘息様の呼吸困難が発生。家の近くの大学病院へ入院依頼するも満床と断られ、やむを得ず車で約1時間かかる小生の勤務する大学病院へ自分で運転して入院した。運転中も息苦しく、痰が吐き出せず大変な思いをした。1週間の入院で軽快したが、何よりも良かったのは退院後自然に禁煙に成功したことであった。禁断症状もほとんどなく禁煙できた。入院中の診断は気管支喘息であった。しかし、小生に喘息の既往はなく、また退院後も現在までに喘息様発作はない。喫煙が入院にいたらしめることがあるということ、病状診断を混乱させることがあるということを身を持って経験した次第です。(67歳 開業医 内科) 

◆喫煙10年目に、化膿性扁桃腺炎になった。1週間、高熱と咽頭痛で「飲めず、食えず、吸えず」の生活をしたら、治った後、タバコのにおいもいやになっていた。(不明 勤務医 整形外科)

◆職員検診にて胸部X-Pで異常を指摘され、精密検査を受けた。幸い腫瘍や結核など重大な疾患はなかったが、その時の恐怖感でスッパリと禁煙した。その際に、ポケットにあったタバコをすべて数時間以内に吸い尽くし(苦しかった)、「もう自分にはタバコが一本もない」と自分に言い聞かせて10年経過している。今ではあんなに苦しいものをよく吸っていたものだ、と思っている。それまでは喫煙本数を少しずつ減らし禁煙に持っていこうとしたことは何度もあったが、いずれも禁煙に成功しなかった。そこで自分の体験をお話することで、禁煙する時にはスパッとやめることを勧めている。(57歳 勤務医 小児科)

◆昔、ハイライトを1日80本吸っていた。深呼吸するのもつらい状況になっており機会があればやめたいと思っていた。ちょうどその時、吐血した。救急車で搬送され緊急入院となった。Hbが4mg位まで下がっており輸血やらなんやら、タバコを吸う吸わないどころの話ではなかった。その後退院しても吸わないまま10年あまり経過した。(58歳 勤務医 精神科)

◆急性ニコチン中毒になってからは、直ぐやめることができた。(44歳 開業医 内科)

◆急性心筋梗塞で入院し禁煙した。(76歳 開業医 内科)

◆喘息発作が続いたので禁煙した。(56歳 勤務医 内科
子供や配偶者から「禁煙するように言われた」のがきっかけという意見も多かった。これは医師に限った話ではないだろうが、もともとタバコを吸うべき職業ではないのに吸っているという“負い目”(?)があるためか、家族からの一言はことのほか効くようだ。

◆うちの子供から「タバコを吸うと血が汚くなるよ」と言われて、その日から禁煙しました。何かきっかけを待っていたのは事実ですが、子供の一言は大きいですね。(46歳 病院 循環器科)

◆息子が小学校2年生のとき、小生がタバコを吸っているのを見て「お父さん、タバコって身体に悪いんだよ」と注意された。患者さんにタバコの害について説いている医師という身なのに、子供に注意されるとはなんと情けないことか!と思い、禁煙する決意ができ、実際禁煙できた。(60歳 勤務医 循環器科)

◆子供の気管支喘息がどこの病院に行っても治らなかったのが、禁煙したらぴたりと治った。(58歳 勤務医 脳神経外科)

◆結婚するときに禁煙を要請された。(54歳 開業医 内科)

◆結婚を機に、奥さんがタバコ嫌いだから、やめました。自分で買わないことが一番大事だと思います。(37歳 勤務医 産婦人科)

◆妻の姉の妊娠をきっかけに禁煙した。(34歳 勤務医 産婦人科)

◆自分の愛している人(子供や配偶者)が強く禁煙を勧めた。(44歳 開業医 循環器科)

◆子供ができて禁煙をした。ただ、それまでも何回も禁煙したことがあり、いつでも吸えるよう以後5年くらいは引き出しにタバコが入っていた。それが今では分煙していないか、していてもタバコがにおう料理店には文句を言うことが多い。吸わない人の周囲でタバコを吸うのは無知である。特に害を受けやすい幼少児の近くでは。そんな喫煙者には嫌悪を感じる。(42歳 開業医 循環器科)

◆成人する前から喫煙し、50年に及ぶ喫煙歴があった。その間、幾度か禁煙できたが1年間が限度であった。身内の孫に対して受動喫煙の害を及ぼしたくないと思ったこと、新車購入時に車内がタバコ臭くなるのを避けたかったこと、自身が老年になって血管障害の危険を減じたいと思っていたことなどが重なって、ある日、突然禁煙し現在に至っている。禁煙は人間の意思の在り方の問題であって、医療費を使って指導されて実現されるものではないと確信している。(71歳 老人保健施設勤務 内科)

 禁煙した医師の中には、ニコチン補充療法(NRT)を行って禁煙に成功した医師もいれば、NRTがあまり効果がなかったと言う人もいる。意外なことに「『禁煙セラピー』などの本を読んで禁煙した」という医師も少なからずいた。

 病院が敷地内禁煙になったことを理由に挙げた医師が多かったニコチン依存症管理料算定要件となっている敷地内禁煙は、少なくとも医師の禁煙には効果を上げているようだ。

◆3年くらい前に夫婦で同時に禁煙したが、私は成功し妻は失敗した。妻の方が喫煙欲求が強かったため、完全断煙からの脱落を恐れニコチンパッチを使用したが、完全に裏目に出てしまい、パッチを貼りながら喫煙を繰り返した。私は完全断煙での卒煙導入をし、そのまますんなりやめられた。最初の2日間のみ合計5個程度のニコレットを噛んだのみであった。妻は私が断煙した半年以上後に卒煙したが、結局NRTを行わずに断煙しただけであった。二人で話し合い、なぜタバコをやめなければならないかを認識、理由付けを明確にしたことがもっとも重要であった。(39歳 開業医 呼吸器科)

◆禁煙したいと思っていたとき「禁煙セラピー」と「リセット禁煙のすすめ」という本を読んだら、タバコを吸いたくなくなり禁煙できた。(36歳 勤務医 循環器科)

◆同僚とともに禁煙を開始し、ニコチンガムやアメを使用。「禁煙セラピー」などの本を読んだりした。(33歳 勤務医 呼吸器科)

◆禁煙して5年目、ニコチンパッチでやめたが、その期間中は悪夢などで苦しかった。(60歳 勤務医 麻酔科)

◆「禁煙マラソン」のホームページで離脱症状のあれこれを勉強して禁煙した。(55歳 開業医 小児科)

◆ドイツ留学中(20年前)、喫煙は病院外ですることになっており、真冬に外で喫煙することは厳しかったのでやめた。(52歳 病院 産婦人科)

◆ニコチンパッチと敷地内禁煙で成功。有効性を感じた。(45歳 勤務医 消化器科)

◆妻の妊娠と大学が敷地内禁煙となったことで禁煙した。(41歳 勤務医 産婦人科)
患者からの指摘やちょっとした気付き、出来事が禁煙のきっかけになることも多い。最後に、そんなエピソードをいくつか。

◆喘息発作で入院中のスモーカー患者から「先生の白衣はいいタバコのにおいがするね」と言われて、呼吸器科医としては当然禁煙せねばと思い、その後、特に苦労せずやめられた。(43歳 勤務医 呼吸器科)

◆担当している小学校の健診で児童から「先生、タバコ吸ってきたでしょ」とタバコのにおいを指摘された。その後にニコチンパッチを使用し禁煙しました。(51歳 開業医 内科)

◆禁煙指導する人が喫煙していたのでは、笑い話になってしまうと思ったことをきっかけに、禁煙できた。(54歳 開業医 外科)

◆自分の意思で吸っているはずが、タバコがないとイライラすることに気がつき、「タバコが自分のご主人さま」のように思えたことがきっかけになた。(46歳 勤務医 外科)

◆学生時代でした。タバコ1本につき喫煙をしているところを見たら、1万円の賞金を出しました。やめるまで5万円取られました。(68歳 開業医 内科)

◆友人と禁煙の賭けをして勝つために禁煙して成功した。(36歳 勤務医 麻酔科)

世界禁煙デーがきっかけで、禁煙に成功した。(51歳 勤務医 麻酔科)

外来で喫煙するドクターを見て、恥ずかしいからやめようと思った。(47歳 勤務医 内科)

◆サックスを吹き始めたら簡単に禁煙できた。(51歳 勤務医 産婦人科)

◆山登りの趣味を始めると同時に禁煙したことで容易に成功した。(58歳 開業医 内科)

◆ホームページで禁煙日記を書いた。(43歳 勤務医 内科)

◆アメリカに行ったときにタバコの値段が高かったことと喫煙場所が限られていたことで、喫煙本数が減ったところに風邪をひいてやめた。(36歳 勤務医 循環器科)

◆テレビでBBC放送の制作した番組を見て感銘を受けた。以前から禁煙しようとしていたので「やめようかな」と呟いたら、家内が即座に「はい、やめましょう」と言って、新品のカートンも含めて家の中にあるタバコの箱を全部、外のゴミ箱に捨てに行った。タンスの中の背広のポケットも全部チェックした。それ以来全く吸っていない。1日60本吸っていたが、身の回りのタバコをすべて外のゴミ箱に捨てたことが効果的であった。当時30代の終わり。今は亡き家内に本当に感謝している。BBC放送にも感謝している。(65歳 病院開業 産婦人科)

◆パチンコや麻雀をしなくなってから、自然とやめることができた。
(45歳 勤務医 整形外科)

◆中学校のころから喫煙あり。医学部の学生時代にクラシックの音楽会を複数団体で開催し、その会自体は黒字で、清算も終わった随分後にJASRAから著作権料の請求書が来たため、自腹で対応せざるを得ず、やむなくタバコ代を浮かして支払いました。医学部の専門課程に上がる時期でもあり、これをきっかけに禁煙し、30年ほどになります。(50歳 開業医 内科)

(風間 浩=日経メディカル オンライン)

(2008年1月30日 記事提供 日経メディカル)