Lesson285

喫煙でCOPD発症こう早まる
コアフコース糖鎖減少でMMP異常活性化、肺胞の破壊へ

 



 理化学研究所は4月4日、喫煙により慢性閉塞性肺気腫(COPD)発症が早まる仕組みを解明したと発表した。理研基幹研究所疾患糖鎖研究チームの谷口直之氏と群馬大学呼吸器・アレルギー内科の前野敏孝氏らの共同研究による成果。

 かねて研究グループは、「コアフコース糖鎖」の減少がCOPDの病因の一つであることを突き止めていた。今回、コアフコース糖鎖を作り出す糖転移酵素「Fut8」を半分しか産生できないFut8ヘテロ欠損マウスを作製。このマウスに1日4本週6日、3カ月間喫煙させると、正常マウスより2倍早く肺気腫を発症した。

 正常マウスの肺細胞では、たんぱく質分解酵素のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の作用で、肺胞壁の構造を保っている。肺胞壁の過剰な分解が起きないのは、TGF−βがMMPの発現を抑制しているからだ。一方、喫煙したマウスの肺組織ではコアフコース糖鎖が減少し、TGF−βの機能を阻害してしまう。結果として、MMPの過剰産生や活性化を引き起こし、肺胞構造を破壊していた。

 研究グループは、今後、Fut8ヘテロ欠損マウスを用いてCOPDの病態を調べることで、ヒトでのCOPDの予防、早期診断、治療薬の開発につなげたい考え。

2012年4月5日 提供:理化学研究所