Lesson174


糖尿病と喫煙で発がんリスクは更に増大!!


糖尿病患者の喫煙、癌死亡リスクさらに上昇

一般住民を対象とした前向き調査の結果を札幌医科大学・大西浩文氏が報告

 喫煙は種々の癌の危険因子であり、また糖尿病患者では癌発症率が高いことが知られている。しかし、その両者の組み合わせ(糖尿病+喫煙)が癌死亡に及ぼす影響については十分に明らかになっていない。5月27日のプレジデントポスター(優秀演題)で札幌医科大学医学部第二内科兼公衆衛生学講座の大西浩文氏は、地域一般住民を対象とした調査結果を報告。糖尿病+喫煙で癌死亡リスクのさらなる上昇を認め、糖尿病患者では大血管合併症予防のみならず、癌死亡の観点からも禁煙指導が重要と解説した。

試験開始3年以内の死亡を除外しても癌死亡ハザード比上昇

 対象は1994年の端野・壮瞥町健診受診者1908人。男性は794人(平均年齢60.3歳)、女性は1114人(平均年齢59.3歳)。ベースライン(初年度)の健診データより糖尿病の有無(空腹時血糖値126mg/dL以上、または糖尿病治療中)を判定し、喫煙は問診で確認を行い、正常群1125人、喫煙単独群661人、糖尿病単独群68人、糖尿病+喫煙群52人の4群に分けた。癌死亡をエンドポイントとして、2007年12月までの最大14年間追跡を実施。

 ベースライン時の患者背景を4群で比較すると、正常群に比べ糖尿病単独群、糖尿病+喫煙群で有意に年齢が高く、喫煙単独群で有意に低かった(正常群59.6歳、喫煙単独群58.8歳、糖尿病単独群66.1歳、糖尿病+喫煙群65.3歳)。脂質プロフィールでは、正常群に比べ他の3群で中性脂肪(TG)高値、HDLコレステロール低値の傾向を認めた。喫煙者が男性に多かったため、喫煙単独群の82.3%、糖尿病+喫煙群の96.2%が男性だった。

 平均追跡期間11.5年で計99人の癌死亡が発生。臓器別に見ると、肺28人、肝・胆管18人、胃17人、結腸・直腸10人、膵臓7人などだった。各群で癌死亡率を比較したところ、正常群2.5/1000人・年、喫煙単独群6.8/1000人・年、糖尿病単独群5.6/1000人・年、糖尿病+喫煙群21.5/1000人・年と糖尿病+喫煙群で最も高かった。

 Kaplan-Meier法で求めた累積生存曲線でも、糖尿病+喫煙群で最も生存率が低下しており、正常群との間に有意差が見られた。さらにCox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、BMI、飲酒、総コレステロールで調整した癌死亡ハザード比を比較。正常群を1とした場合、喫煙単独群2.43、糖尿病単独群1.65、糖尿病+喫煙群6.04となり、喫煙単独群、糖尿病+喫煙群では正常群との間に有意差が認められた。ベースライン時の担癌状態を除外するため、試験開始3年以内の死亡を除外した解析でも、ハザード比は同様の傾向を示した。

 大西氏はこの結果を踏まえて「喫煙単独でも癌死亡リスクとなるが、さらに糖尿病患者の喫煙ではリスクが高まることが示された」と解説し、「糖尿病患者では大血管合併症の予防のみならず、癌死亡の観点からも禁煙指導が必要」と強調して、発表を終えた。


(2010年6月1日 提供:m3.com)