Lesson109


多発性硬化症や脳委縮に喫煙の関連



研究者らによれば、多発性硬化症患者において喫煙は病変増加、萎縮の進行、血液脳関門の破壊のリスク増加に関連

Allison Gandey

【8月20日】多発性硬化症患者において喫煙は病変増加、萎縮の進行、血液脳関門の破壊のリスク増加に関連している、と研究者らは述べている。非喫煙者と比較して、喫煙者では、脳病変が約17%多く、脳室が13%大きく、脳の大きさが小さいという結果が『Neurology 』8月18日号に掲載された。

「われわれの研究から得られた知見は、喫煙が多発性硬化症患者における障害進行の重要な寄与因子であることを示唆している」と、筆頭著者であるニューヨーク州立大学医学・生物医科学部(バッファロー)のRobert Zivadinov, MDはMedscape Neurologyに語った。「われわれの研究は、喫煙が多発性硬化症患者の脳組織傷害を助長しうるということを証明する最初の研究であり、これは驚くべきことであった」。

研究者らは、遺伝要因と環境要因の両方が多発性硬化症の感受性および進行に関与しているということを示唆するエビデンスを指摘している。研究は、喫煙が疾患の発症および悪化に関連する最も説得力のある環境リスク因子のひとつであることを示唆している。その他の環境リスク因子としては、日光曝露、ビタミンD欠乏、エプスタイン・バー(EB)ウイルス感染症などがある。

今回の解析は、患者368例を対象として実施した。すべての患者について臨床的評価及び定量的磁気共鳴画像検査を実施した。患者の平均年齢は44歳で、大部分が約12年前に多発性硬化症と診断された。

患者に喫煙歴について尋ねた結果、非喫煙者240例、喫煙者96例、禁煙者32例であった。研究者らは、喫煙が総合障害度評価尺度(EDSS)スコアの増加に関連していることを見出した(P=0.004)。

総合障害度評価尺度

喫煙歴
スコアの中央値(四分位範囲)
禁煙
3.0 (2.0)
喫煙
3.0 (2.0)
非喫煙
2.5 (2.5)

喫煙者は、試験までの3カ月間、1日当たり10本以上タバコを吸っていた。禁煙者は、試験開始前に6カ月以上タバコを吸っていた。 また、喫煙者の喫煙歴は、平均18年間であった。

喫煙は病変の悪化に関連していた。これには、造影剤増強病変(P<0.001)、T2病変(P=0 .009)およびT1病変(P=0.003)の数の増加が含まれた。喫煙はまた、脳実質の機能低下(P=0.047)、側脳室容積(P=0.001)および第3脳室幅(P=0.023)の増加にも関連していた。

これらの知見は、『Archives of Neurology(2009;66:858?864)』7月号に掲載された別の研究結果と同様である。Medscape Neurologyが以前に報告したように、研究者らは、喫煙が疾患の急速な進行の一因となることを見出した。

疾患の急速な進行

多発性硬化症と診断された患者で、ブリガム女性病院Partners多発性硬化症センター(Partners Multiple Sclerosis Center at Brigham and Women's Hospital)(マサチューセッツ州ボストン)で治療中に喫煙に関する自記式質問票に記入した1465例を対象として試験を実施した。

喫煙者では、ベースライン時の疾患の重症度が有意に高く、疾患の進行も速いことが判明した。「したがって、再発寛解型多発性硬化症患者が喫煙者の場合、非喫煙者よりも早く進行型多発性硬化症を発症した」と、研究の著者であるハーバード・メディカル・スクール(ボストン)のAlberto Ascherio, MDは説明した。

試験結果が最初に発表された際にコメントを求められ、「禁煙は多発性硬化症を治療するために実行できる最も簡単なことであると患者に言うもう一つの理由となる」と、米国神経学会(AAN)会員であるSwedish Neuroscience Institute(ワシントン州シアトル)のLily Jung, MDは述べた。

禁煙

「疾患修飾療法とその費用、注射に対する不安、副作用に関する議論を始める前に」、喫煙について話し合うべきである、とJung博士は述べている。 禁煙によって疾患の進行を抑制できる可能性が高まる、と同博士は述べた。

喫煙と多発性硬化症の関連の生物学的基礎は確認されていない。「ニコチンに加えて、タバコの煙は、タール、一酸化炭素、多環式芳香族炭化水素など、数百の有毒成分を含有している」と、Zivadinov博士は述べた。

この研究は、喫煙者の多くがタバコを吸い始める学校での禁煙教育の重要性を強調している、と同博士は述べている。「学校での禁煙教育および多発性硬化症患者に対するより的を絞った禁煙プログラムをさらに促進し、支援する必要がある」。

この研究は、全米多発性硬化症協会(NMSS)の助成を受けた。筆頭著者であるRobert Zivadinov博士は、Teva Neurosciences社、Biogen Idec社、Aspreva社、Pfizer社、EMD Serono社、Genzyme社、Aspreva社から資金を受けていることを明らかにしている。

出典

Neurology. 2009;73:504?510.

Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape

(2009年8月25日 記事提供 Medscape )